社団法人日本アルパインガイド協会所属ガイドが長年に渡って培ってきたセルフレスキュー技術を公開するとともに、遭難事故による犠牲者を出さないためにもこれら技術の普及に努めて参りたいと考えます。一昨年から開始したこれらのレスキュー技術講習会も一定の成果を見るに至り、より定着を目指してレスキュー技術資格として本年度より資格化を実施する運びとなりました。
 クライミング技術を重視するあまり忘れがちな、これらのセキュリティ技術を正しく段階を踏んで学ぶことは、救助救出技術を習得するだけでなく、アルパインクライミングでのセキュリティについての基本を学ぶこととなります。上級者やガイドにとっては必須の技術といえますが、上級者やガイドばかりでなく、一般登山道に出てくる危険個所の通過などの際にも大変役立つ技術も含まれています。登山を志す方、皆さんの資格取得をお勧めいたします。
 事故や遭難を起こさないことは皆の願うところですが、事故や遭難に対する確かな技術的備えを是非ともお勧めするところです。
遭難対策委員長 嶌田 聡

資格の種類と内容について
下記の講習を行いながらその技術能力を評価判定して行う。
初級
  • レスキューに必要なロープの結び方、使い方 (半マスト結び/仮固定の結び/固定の結び/フリクションヒッチ/Kシステム)
  • 支点技術 (流動分散、固定分散の技術/荷重角度についての技術)
  • 懸垂下降技術(半マスト結びでの下降/他の器具を使用しての下降技術)
  • ロープの仮り固定技術(確保時の仮固定/懸垂下降時の仮固定)
  • 75度程度の傾斜で懸垂下降中に停止し作業する技術
  • パートナーの吊り降ろし技術(背負ってのカウンターラッペル/補助しながら歩いてのカウンターラッペル/補助者の操作による背負い降ろし)
  • 緩傾斜での1/2、1/3、1/5の引き上げ技術
  • 自己脱出技術
  • 怪我人の梱包、搬送技術
中級
  • 支点のセット、レスキュー器具、ロープの使用方法 (基礎技術)
  • コブの通過技術(基礎技術)
  • 垂壁での自己脱出技術(基礎技術)
  • 背負っての搬送技術(基礎技術、山道100mほどで行う)
  • 垂壁での引き上げによる救助技術10m以上 (中級=3分/m以内を合格ラインとする。2種以上のシステム(1/3 1/5 1/7 1/9)を使用する。被救助者を確保状態からスタートさせる。)
  • 垂壁での背負ってのカウンターラッペルによる降ろし技術20m以内とする。
  • 垂壁での懸垂下降中のトラブルからの救出技術(上方からの救助)
  • 応急処置
上級
  • レスキュー器具、ロープの使用方法 (基礎技術)
  • コブの通過技術(基礎技術)
  • 自己脱出技術(基礎技術)
  • 背負っての搬送技術(基礎技術、山道100mほどで行う)
  • 引き上げ技術10m以上 (上級=2分/m以内を合格ラインとする。2種以上のシステムを使用する。被救助者を確保状態からスタートさせる。)
  • 背負ってのカウンターラッペルによる降ろし技術30〜40mとする。
  • オーバーハングでの宙吊りからのレスキュー技術
  • 懸垂下降中のトラブルからの救出技術(上方からの救助)
  • 応急処置
  • 支点のセット理論と墜落の力学、安全管理(筆記試験、4者択一及び記述、20問)
(注)上級資格では、机上講習のうえで筆記試験を行います。

また、これらの講習、検定は希望により団体での申し込みも受け付けています。それについては団体講習としてお問い合わせください。
実技講習と実技検定のすすめかたについて
(初級)
講習項目、内容毎に最初に講師が実技講習を行った上で参加者の検定を行います。
検定が危険と思われる場合は、バックアップロープで確保します。参加者個々の技術レベルを超えていると思われるときにはその項目の検定を、あるいは個々の検定を中止することがあります。

(中級)
項目毎に先ず参加者に実技を行っていただきます。出来なかった部分、知らなかった内容について講師が講習を行い、その上で検定を行います。
検定が危険と思われる場合は、バックアップロープで確保します。参加者個々の技術レベルを超えていると思われるときにはその項目の検定を、あるいは個々の検定を中止することがあります。

(上級)
検定項目毎に先ず、参加者の実技検定を行います。その後に出来なかった部分、知らなかった内容について講師が実技講習を行います。
検定が危険と思われる場合は、バックアップロープで確保します。参加者個々の技術レベルを超えていると思われるときにはその項目の検定を、あるいは個々の検定を中止することがあります。

評価方法について
全資格とも実技審査9項目ごとに下記5段階評価を行います。
  • ◎ 100点 実技が正しく素早くでき、理論を理解している。応用力がある。
  • ○  75点 実技が正しく素早くでき、理論を理解している。
  • △  50点 講習内容に沿ってなんとか出来る、理論を理解していると言い難い。
  • ▲  25点 講習内容の幾つかを出来ない。
  • ×   0点 出来ない。
上級資格については、登山一般、支点力学、ロープ力学、引き上げ理論、等の講習の後に筆記試験を行います。よって初、中級は9項目、上級は10項目の審査が行われ、0点の項目がなく、平均点で70点以上を合格とし、資格認定いたします。

資格認定について
資格認定は検定委員の評価をもとに認定会議にて決定され日本アルパインガイド協会理事会承認を経て認定されます。認定者には、認定証を授与いたします。
(初級認定証)


(中級認定証)


(上級認定証)

また、上級認定者には「レスキューマスター」の称号を授与するとともに「レスキューマスターバッチ」を贈呈いたします。

「レスキューマスター」は当協会準会員として会員登録することが可能となり、レスキュー技術の研究、指導にあたることが可能となります。
日本アルパインガイド協会